日経ものづくり 見える化の極意
第2回:生産現場の物の見える化(1)

小坂 信之
中部産業連盟
東京本部 東京コンサルティングセンター
所長 主席コンサルタント

自主性とチームワークを育てる5S
継続的な管理・改善活動の下地に

 前回は「見える化/VM(Visual Management)の重要性と神髄」について説明した。今回は「生産現場の物の見える化」をテーマに,経営の見える化の必須条件ともいえる5S(整理,整頓,清掃,清潔,しつけ)の重要性と5Sの全体展開について解説する。その上で,5Sのうちの整理としつけに関して展開ノウハウを紹介する。

5SはVMの必須条件

 工場棟の入り口に,華々しく「5S運動推進中」のスローガンやポスターを掲げている工場をよく目にする。だが,看板の目的通りに本物の5Sができている工場はほとんどない。特に,5Sの中でも整頓ができていない工場が多い。一見,不要物がなく清掃が行き届いてきれいに感じる工場でも,裏通りや,工具を入れた作業台の引き出しの中などの見えないところは全く5Sができていない,というケースは少なくない。

 本格的な5Sができていない中で,見える化の手法を中心とした改善・革新活動に取り組んでいる工場もしばしば見かける。こうした工場の大半は,見せかけだけの見える化に終始し,真の見える化に至っていない。