日経ものづくり 特集


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 7時。私の席のある4階のオフィスにはまだ誰もいない。今日は「セットアップ出荷」と呼ぶ取り組みに向けた早朝会議の日。進ちょくと予定を報告するために,検討メンバーが集まりやすいこの時間をわざわざ狙って1日置きに開いているのだ。
 「おはよう。では始めましょう」
 社長以下検討メンバーが集まり会議が始まった。セットアップ出荷とは,これまで協力会社からばらばらに客先に納入していた製品を,佐倉工場で1まとめにして配送する試みだ。ただし,その実現には工場レイアウトを見直した上で,アセンブリするスペースの確保や設備の導入が必要となる。工場設備の面倒を見る我が生産技術課にとって,当面の大きな業務テーマの一つだ。このため,私はここ数カ月,2日に1度は早朝6時半に家を出る生活が続いている。

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望月氏(仮名)
社内ベンチャー制度を利用して起業した,元・電機メーカーの設計者。
野口氏(仮名)
自動車部品メーカーの生産技術者。開発,情報システム,製造などの部門も経験。
塚本氏(仮名)
金型メーカーの技術者。中国拠点の立ち上げにも関わっている。
草野氏(仮名)
電機メーカーの設計者。3次元CADなどの導入を積極的に推進している。
陸田氏(仮名)
機械メーカーの生産技術者。生産システムの改善に取り組んでいる。

司会 今日は「技術者の仕事とモチベーション」というテーマで皆さんの本音をお聞きしたいと思います。技術者の仕事はかなり忙しくなっていると思うのですが,その辺の状況はどうでしょうか。「やらされ感」というのは強いですか?

野口氏 生産技術部はやらされ感満々ですよ。人の決めたことをやるのが生産技術だと思ってますから。それに,生産技術者の仕事って外から分かりにくいですよね。どんなに新しい技術も,結局はいかに安くものを造るかに帰結します。その難しさを説明できていないですから,なかなか認めてもらえない。そこを解決していかないと,生産技術者のやる気というか,気合いが入ってこないんです。

やりたいことを試作品で表現
稟議書なしの予算は500万円

PFUの「Rising-V制度」は,社員のアイデアに基づいた試作品の作製を支援する制度だ。同社の業務や技術に少しでも関係していれば基本的にどんな提案でも受け入れる。唯一の条件が,「アイデアを提案するだけでなく,本人が実行すること」(同社代表取締役社長の輪島藤夫氏)。予算は500万円。2002年の同制度開始以来,毎年30~50の提案を受け付けてきた。

 2002年は,サーバ/ストレージを生産していた笠島工場を分離するなど,PFUの事業構造が大きく転換した年である*。このため,「培ってきた技術,人を生かす」(同氏)ことの重要性が増し,社員のモチベーション向上や新規事業の創出につながる取り組みの一つとしてRising-V制度を開始したのだ。

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図●Rising-V制度を利用して試作したペットボトルクーラ
コンピュータの冷却装置に使われているペルチェ素子を応用し,ペットボトルを冷やす製品を提案した。