CMOSプロセスの微細化は,アナログ回路にもさまざまな影響をもたらしている。回路技術関連の国際学会では,より低い電源電圧で動作したり,より高速に動作したりできるA-D変換器の提案が相次ぐ。その最新の成果や動向について,アナログ回路の専門家に解説してもらう。(堀切 近史=本誌)

吉岡 正人
富士通研究所 システムLSI開発研究所 アナログ回路研究部
塚本 三六
富士通研究所 システムLSI開発研究所 アナログ回路研究部 主任研究員
小林 修
富士通研究所 システムLSI開発研究所 アナログ回路研究部 部長

 A-D変換器の技術開発が活発化している。これまでA-D変換器は,パイプライン型やΔΣ型,逐次比較(SAR)型といった回路構成のアーキテクチャごとに,用途のすみ分けが図られていた。それぞれが得意とする分解能や変換速度が異なっていたためだ。しかしCMOSプロセスの微細化が進むにつれて状況は一変する。アナログ回路がより高速で動作できるようになり,既存のすみ分けが崩れ始めてきた。