日経オートモーティブ 連載

最新センサ詳解 第2回

磁界の向きから
回転速度や角度を検出

クルマの電子化にともなって、車載センサの高精度化が進んでいる。回転速度や角度を検知する非接触磁気センサとして、現在は主にホールセンサを使っているが、より高精度のMR(磁気抵抗素子)センサへ置き換える流れがある。MRセンサメーカーであるNXP Semiconductors社に現状と展望を解説してもらう。(本誌)

NXPセミコンダクターズジャパン 
オートモーティブ事業部マーケティング部担当マネージャー
林 則彦


 クルマの安全性能や環境性能、快適性に対する要求が高まってきた。センサも高精度化したい。数ある車載センサの中でも多く使われているのが、回転速度や角度を検出する非接触磁気センサだ。
 磁気センサが使われる例として、クルマの安全性を高めるABS(アンチロック・ブレーキ・システム)がある。
 ABSは、すでに国内で多くの車種に標準装備され、車両を安定して走らせる装置としての認知度は高い。このシステムは、各車輪の回転速度を検出し、それらを比較する。回転速度が低い車輪は、ロックして空転している可能性が高いため、ブレーキ力を弱めて、ロックを防ぐ。
 ABSと同様に、車輪の回転速度を検出して、横滑り時にブレーキだけでなくエンジンの出力も抑えるTRC(トラクションコントロール)や、パンク事故を防ぐTPMS(タイヤ空気圧監視システム)などもある。
 このほか、安全性以外にも、環境や快適性を向上するためにも磁気センサは使われている。例えば、エンジン制御や可変バルブタイミング、電子スロットル制御、アクティブサスペンションや電動パワーステアリングなどだ。特にパワートレーン系は燃費向上のために高精度化の要求は強い。
 磁気センサは、用途によって回転速度センサと角度センサの2種類の使い方ができる。

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図●磁気センサ(回転速度)の採用例
エンジンのカムシャフトやクランクシャフト、自動変速機、ABSなどに使われている。