日経オートモーティブ 解説

自動車メーカー、研究期間が開発を続けているHCCI(均質予混合圧縮着火)エンジンは、燃費がよく、しかも排ガス中の有害物質を下げられるため、究極のエンジンと見なされる。HCCIの考え方に基づくエンジンを、ドイツのVolkswagen(VW)社は専用燃料を用いて「CCS(Combined Combustion System)」として開発、2006年12月に報道機関向けの試乗会で実走行させた。

 ガソリンエンジン、ディーゼルエンジンどちらからも次世代の有望技術と目されているのがHCCIエンジンである。厳密に言えば、燃料の噴射方法は噴射時期、燃焼のさせ方などに様々なタイプがあるが、噴射から着火までの時間を制御することで、混合気を均質化しようというものだ。
 HCCIでは、あらかじめ燃料を噴射して、シリンダ内の空気との混合を促進し、自己着火により多点同時着火をさせる。混合気を均質にすることで、局所的な温度上昇が起きにくいのが特徴である。
 ガソリンエンジンに適用した場合は、圧縮比を高められ、全体の混合気濃度を薄くすることで燃費を改善できる。一方、ディーゼルエンジンに適用した場合は、燃焼温度が下がってNOx(窒素酸化物)の排出量が下がり、さらにPM(粒子状物質)にも有利となる。
 ただし、予混合圧縮着火で運転できる領域が狭いのが課題である。実際の車に適用するには既存の燃焼方式と切り替える必要があったり、自己着火の制御が難しいといった課題があり、実車に搭載した例はなかった。

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図●CCSの位置付け
CCSはディーゼルエンジンとガソリンエンジンの長所を取り入れたもの。燃費が良いディーゼルの特徴を生かすため、ディーゼルエンジンをベースとし、低負荷ではCCSモードで、高負荷では通常のディーゼルモードで運転する。