日経ものづくり 幾何公差
日経ものづくり 幾何公差

『ベーシック幾何公差』は,設計形状を正確に表現するために用いられる幾何公差の基礎を学ぶコラムです。今後のグローバルなものづくりに求められる幾何公差について,その実用上の意味とその書き方,間違えやすいポイントなどを例題を基に解説していきます。

第1回:公差記入枠とデータム

大林利一
いすゞ自動車 CAE・システム推進部
IDEPグループシニアスタッフ

図面からあいまいさを排除し
グローバル化に対応


 グローバル化が進展する現在,事業の国際分業化が加速している。部品を海外メーカーから調達したり,共同で開発したり。それに伴って設計者にはグローバルなものづくりに対応できる図面作りが求められている。当然,図面の中の精度情報(公差)は,設計者の意図を製造現場に正確に伝えるものでなくてはならない。
 ところが,海外,特に欧米と日本の図面には大きな違いがある。日本における図面の精度情報が寸法公差を主体としているのに対し,欧米では幾何公差が主流であるという点だ。実は,これが国際分業を進める上で大きな障害となる。寸法公差を主とした精度情報では,図面の解釈にあいまいさが残るからだ。

日経ものづくり 幾何公差
図●穴形状を規定する寸法公差と幾何公差の違い
寸法公差は2点間の距離の誤差を規定しているにすぎず,大きくゆがんでいても成立する(a)。幾何公差で真円度を指定することで,初めて円としての形状を規定できる(b)。