トヨタ自動車が開発したハイブリッド車「プリウス」は,同社の環境に対する企業イメージを押し上げた製品の象徴として語られることが多い。同社で13年間,プリウスの開発に携わってきた技術者に,その過程を振り返ってもらった。革新的な製品開発のモデル・ケースとして読み取れそうだ。(小谷 卓也=本誌)

小木曽 聡
トヨタ自動車 第2トヨタセンター 製品企画 エグゼクティブ・チーフエンジニア

 我々が1997年末にハイブリッド車「プリウス」の初代モデルを投入して,今年(2007年)でちょうど10年になる。この10年間,プリウスというクルマを通して,トヨタ自動車に対する企業イメージ,特に環境面でのブランド(以下,「環境ブランド」)は確かに向上した。

 プリウスによる環境ブランドの構築は,開発当初から狙っていたものではない。結果として,社会やユーザーから得られたものである。世界初の量産ハイブリッド車という革新的な新規技術の導入と同時に,室内を広くし,けれども外形はなるべくコンパクトにするといったパッケージにもこだわった。この組み合わせが,「次世代の自動車」の一つの提案として,非常に高い評価を受けたと考えている。実際,プリウスは従来車種と異なる購買層を取り込むことができている。