日経ものづくり 設計者のための解析入門

最終回 熱流体解析編(4)

経路を見極めて熱対策を
実験結果の誤差にも注意

便利な熱流体解析ツールだが,やみくもに解析しても無駄に計算時間を費やすだけ。うまく使いこなすには,解析に取り掛かる前に,熱が移動する経路を想定したり,計算や実験が含む誤差をきちんと理解しておいたりすることが重要だ。(本誌)

広野 友英
電通国際情報サービス 製造システム事業部 CAE技術部

 最近は計算機の能力が向上したため,さまざまなパラメータを組み合わせた複数の解析を自動で処理できるようになってきた。実験値と解析値を合わせ込むためにパラメータの同定計算を行ったり,実験計画法やタグチメソッドなどとCAEを組み合わせて設計の効率化・ロバスト性向上を図ったりといった取り組みも盛んだ。  しかし,そうした取り組みの前に,どの設計パラメータが製品性能に影響を与えているのかをあらかじめ絞り込むことを考えよう。

ツールは使いよう
 設計者にとってCFD(Computer Fluid Dynamics)ソフトはあくまで道具にすぎず,それを使うだけで途端に設計品質が高まったり,作業効率が良くなったりするわけではない。肝心なのは使い方だ。これを誤ると無駄に時間を費やすことになる。特に,CFDは線形構造解析などに比べて一般に計算時間が長いため,この見極めが重要だ。
 設計対象の熱問題を考えるに当たっては,まず手計算などで簡単な熱設計を実施しておこう。特に,熱の伝達経路はあらかじめ把握しておいてほしい。
 本連載の熱流体解析編(1)でも簡単に触れたが,着目している部品に関わる熱伝導,対流熱伝達,輻射(p.137-138の別掲記事参照)を整理し,熱源からどの経路でどれだけ外部に伝わるのかを考える。最初に簡単な図を描いて経路を定性的に整理すると分かりやすいだろう(図)。

日経ものづくり
図●熱経路の模式図
熱移動の経路には,伝導,対流熱伝達,輻射の3種類がある。注目している部品やユニットのどこが発熱して,どこからどういう現象で熱が移動するかを想定して解析に臨む。最初は部品から始め,ユニット,製品へと規模を拡大していく。