日経ものづくり 開発の鉄人

第33回 モノマネ芸人危うし

「開発の鉄人」こと 多喜 義彦

話している内容と,
声とを分けて再生できるシステム。
声のパターンを取り込んでおけば,
テキストを入力するだけで,
その人特有の声で音声を合成できる。
携帯電話機,カーナビなど使い方はいろいろ。
悪用されないこと,権利関係を確立すること。
こうした条件さえ満たせば,
大きな市場が開ける。


 開業1年目を迎える新北九州空港に「メーテル」がいる(図)。「銀河鉄道999」に出てきたあのメーテルなんだけど,もちろんホンモノではない。精巧にできたロボットだ。
 空港に降りたお客様にいろいろと案内をしてくれる。その声がメーテルそのもの。知ってる人は驚くだろう。メーテルを演じている声優の池田昌子さんの声なんだからね。メーテルだけじゃなくてオードリー・ヘプバーンやメリル・ストリープの吹き替えもやっている大物だ。
 実は池田さんに案内を全部吹き込んでもらったわけではない。1~2時間録音はさせてもらったけど,言ってる内容は案内とは全然違う。そりゃそうだよね。案内の内容はものすごい種類になるから,その分だけ声優さんを拘束したら大変なことになる。しかも大物だよ。
 録音したデータから声の特徴だけを抽出しておくんだ。案内するときは話す内容をテキストの形で持っていて,普通の音声合成のように使う。それで音声合成の“ロボット声”でなく,メーテルの声になるというわけだ。

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図●新北九州空港の「メーテル」
観光案内,乗り換え案内,何でもできる。