日経ものづくり 業務改革/改善のためのABC

業務改革/改善のためのABC

最終回
五つのステップで改革/改善
能力強化と同時にコストカット

佐藤 俊行
IBMビジネスコンサルティングサービス
戦略コンサルティングサービス

これまでの3回を通じて,業務改革/改善のためのABC(Activity Based Costing)について,その考え方と現状業務の調査/分析方法について解説してきた。最終回となる今回は,この手法に対する理解をより深められるように,実際に同手法を適用したプロジェクト事例について紹介してもらう。 (本誌)

 最終回の今回は,事例編として,ABCの手法を実際に適用したプロジェクトの事例を紹介する。紹介する事例は,製造業A社の研究開発部門におけるものである。研究者をサポートしている間接部署の現状業務の調査/分析を行い,その結果から改革/改善の構想を策定した事例である。
 A社の業界では,ここ数年間,国内市場は既に縮小均衡状態にあり,さらなる売り上げの拡大は期待できない。そこで,より一層の収益力強化に向けて,「体質改善を図りながらのコストカット」を目的とした全社の間接部門に対する取り組みを進めていた。
 しかし,研究開発部門のような自社にとって競争力の源泉となり得る部門への対応は慎重に行う必要がある。一律的なコストカットを行ってしまうと,市場での自社商品の競争力低下を招く恐れがあるためだ。
 そこで,A社では,限られた人的資源を有効に活用しながらコストカットを実現すべく,自社の戦略に沿って対象となる間接部署のミッションを再定義するところから着手した。そして,十分な調査/分析を通じて,戦略にひも付く業務への選択と集中を図った。