日経ものづくり 材料力学マンダラ

第26巻
管フランジ締結体の漏洩を防ぐ

広島大学大学院教授 沢 俊行


●ガスケットの接触応力の分布をより一様に設計すべし
●特に金属製は縦弾性係数を小さく,厚さを十分に
●呼び径が8インチ以上の大口径管フランジにはご用心


 接触問題の例題として,前回はボルト締結体,とりわけ座金にフォーカスし,その縦弾性係数と厚さの重要性について説きました。座金の効果を期待するのなら,その点を踏まえてきちんと選択してください。実は,同じような例がまだ身近にあります。それが,いわゆる管フランジ締結体(図)。主にプラントでパイプを接続する部品です。
 一般に,管フランジと管フランジを接合する場合,両者の間にはシール性を高めるためにガスケットを挟みます。それは形状により,管フランジの接合面全面に接触する「全面座型」と,部分的に接触する「平面座型」に大別でき,おおむね前者は低圧(内部圧力)用途に,後者は高圧用途に使用されます。ここで考えてみてください。接触面積の違いにより用途が異なってくる理由を。
 接触面積を変えれば,ボルトで締め付けたときのガスケットの接触応力が変化する。接触面積が広い全面座型では接触応力が小さくなるし,接触面積が狭い平面座型ではそれが大きくなる。当然のことながら,ここでいうガスケットの接触応力は圧縮。逆に,内圧が作用するガスケットに発生する応力は引っ張り。従って,もともとの接触応力,すなわち圧縮応力が大きいほど,高い内圧に耐えられることになります。
 かくて,平面座型ガスケットは高圧用,全面座型ガスケットは低圧用とすみ分けされているのです。

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図●代表的な管フランジ締結体
ガスケットが管フランジの全面に接触し挟まるケース(a)や,部分的に接触し挟まるケース(b)がある。前者のガスケットを「全面座型」,後者のそれを「平面座型」と呼ぶ。なお,図中のFfはボルトの初期締め付け力で,内圧pが作用することでボルトの軸力がFt分増加し,フランジの接合面の力はボルト1本当たりFc分減少する。