日経ものづくり 特報

設計者が使うCAE
オーダーメードで専用化

操作性とレスポンスを高め現場に定着


依然として設計者のCAE活用に四苦八苦している企業は多い。そんな中,特定の設計用途に特化した分かりやすい解析システムを構築して現場での利用を促す企業が増えてきた。近年では,特化型の専用システムを構築するためのパッケージが増え,導入気運も高まっている。最新のシステム構築用ツールとともに,ユーザーの活用事例からその効果を探る。

 設計者のCAE利用を促すべく,特定の業務に特化したり,解析対象を絞ったりした独自の設計支援システムを構築する企業が増えている。汎用のソルバやプリポスト・プロセッサに,独自のユーザー・インタフェースを設けて入力作業を簡素化。CAEに詳しくない設計者の利用を促す,いわばオーダーメードの解析システムだ。

本当は設計者も使いたい
 「設計者もできればCAEを自分で使って設計に生かしたいと考えていた」―。こう語るのは本田技術研究所四輪開発センターの高橋伸一氏。同センターでは,高橋氏の主導でエンジンおよび吸排気系の仕様を検討する解析システム「SS-SYSTEM」を構築し,設計者がエンジン設計などに活用している。具体的には吸排気ポートから,インテーク・マニホールド,エアクリーナ,マフラー(以下エンジンと総称)などを設計対象にしている。
 SS-SYSTEMは,計算の流れやデータベースを管理するためのフレームワーク「CAE-ONE」(電通国際情報サービス)に,1次元のエンジン解析ツール「AVL BOOST」(オーストリアAVL List社,以下BOOST)と最適化支援ツール「iSIGHT」(米Engineous Software社)を組み込んだWebベースのシステム。エンジンの開発は,設計が進んでから大幅な設計変更をするのが難しいため,初期段階での仕様決めまでに目標性能を見極めておかなければならない。そこで,開発の最上流においてCAEで性能を評価し,定量的に根拠のある設計を進めようと同システムを構築した。現在,主にディーゼルエンジンの設計に利用している。
 計算ジョブを実行すると,BOOSTが性能の指標となる体積効率*1を算出。続いて,設計者が指定した寸法値を設計変数とし,体積効率を目的関数としてiSIGHTが最適化計算を実行する。iSIGHTが設計パラメータとなる寸法値を生成しながらBOOSTで計算を繰り返すことにより最適な設計案を導出する(図)。

日経ものづくり 特報
図●SS-SYSTEMの概要
最適化支援ツール「iSIGHT」とエンジン解析ツール「AVL BOOST」を組み合わせ,解析プロセス管理用のフレームワーク「CAE-ONE」でワークフローやデータを管理する。入出力データや最適化計算の結果,BOOSTの計算結果は自動的にデータベースに格納される。