日経ものづくり アイデアコーナー

引き戸の開閉アシスト装置 【アイスリー】

回転方向によって歯車の連結状態を切り替え

 引き戸を開けて通過し,通過し終わった後に閉める―という何気ない動作も,荷物を持っていたり車イスで通過したりする場合は簡単ではない。トビラを大きく開ける必要がある上に,振り向かなければ完全には閉められない可能性があるためだ。
 そこでアイスリー(本社神奈川県相模原市)は,引き戸の開閉アシスト装置「AIDoor」を開発した。トビラを開閉するとき,手でトビラを動かすのは最初の100mmほどだけ。その後は,自動的にトビラが動いていく(図)。
ゼンマイでピニオンを回す
 同装置はつり下げ式の引き戸に対応する。トビラを固定するハンガーユニットの背面外側に取り付けた車輪が,壁に固定したレールベース部の奥側にあるレールの上を走行する方式だ。このハンガーユニットおよびレールベース部に開閉をアシストする仕組みを組み込んだ。ハンガーユニットに取り付けたピニオンと,レールベース部に固定したラックをかみ合わせることで開閉動作をアシストする。
 ちなみに,トビラを開く際と閉まる際のそれぞれで動作させるため,同様のアシスト機構を左右対称に配置してある。例えば左開きの引き戸の場合,右側が開く動作のアシスト機構,左側が閉じる動作のアシスト機構となる。
 アシスト機構の中心となるのが,ハンガーユニットに取り付けたギアボックス。ギアボックスはゼンマイを内蔵しており,複数の歯車を介してピニオンとつながっている。つまり,トビラを動かすことでピニオンを回転させてゼンマイを巻き上げ,ゼンマイに蓄えた力を使ってピニオンを回転させてトビラを動かす。

日経ものづくり アイデアコーナー1
図●引き戸の開閉アシスト装置
トビラの開閉時,最初に少しだけ動かせばよい。


損失が少ない風向き調整機構 【シャープ】

継ぎ目のないパネルで流路を長くする

 冷暖房機器において冷風や温風が直接肌に当たると,設定温度と体感温度の差が大きくなる。室内の温度ムラをなくすためにも,冷房時には天井方向,暖房時には床方向に風を送り込むのが適している。ただし,このためにはある程度の風速が必要。十分な風速を得るためには送風ファンの出力を高めればよいが,消費電力も増えてしまう。
 シャープが2006年12月に発売した家庭用ルームエアコン「SXシリーズ」では,風の吹き出し方向を上下に変える機構として,従来の複数枚の短い板(ルーバ)に代えて,吹き出し口全体を覆う長さ23cmのパネルを採用した。多段式のルーバでは内部からの流線に対してどうしてもすき間ができてしまうが,1枚のパネルであれば送り出されるすべての空気の向きを変えられる。これにより,風の吹き出し効率を約20%向上でき,ファンの音を減衰する効果もある。
 ルーバであれば左右に貫通する軸を中心に上向きにしたり下向きにしたりできるが,パネル1枚ではこのような方法を採用することはできない。そこで,風の吹き出し方向を下向きにする場合にはパネルの上端を軸にして開き,風の吹き出し方向を上向きにする場合には下端を軸に開く構造とした(図)。
 ロングパネルは,吹き出し口の左右端に付く細長い板部品と,吹き出し口全体を覆うパネルで構成する。下端の軸で板部品を支持し,板部品とパネルの上端もヒンジでつながっている。

日経ものづくり アイデアコーナー3
図●ロングパネルの開き方
冷房時には上端,暖房時には下端を軸として開く。