日経オートモーティブ 解説

欧州の主要完成車メーカーが、車載ECU部品を開発するサプライヤーに対して開発プロセス標準「Automotive SPICE」に基づいたアセスメントを実施し始めた。2007年以降、欧州の主要完成車メーカーと取引しようとするサプライヤーは、自社の開発プロセスをAutomotive SPICEの要求に対応させる必要がある。それでは、Automotive SPICEとはどのようなものなのか。Automotive SPICEに詳しく、日本語版の翻訳などを手掛けたコンサルタントに解説してもらう。
ビジネスキューブ・アンド・パートナーズ 社長兼CEO
ファン・マヌエル・エステベス

 車載ECU部品を開発する国内サプライヤー各社は、この1年ほどの間に相次いで欧州完成車メーカーからAutomotive SPICEに基づいたアセスメントやプロセス改善の要求を受けるようになった。
 これに伴って組み込みソフトウエア開発現場からは「Automotive SPICEとは何か?」「一体完成車メーカーは何を求めているのか?」というようなAutomotive SPICEに関する詳細情報を求める声が日増しに強まっている。2006年8月にAutomotive SPICEの策定団体である「Automotive SIG(Procurement Forum/SPICE User Group)」から日本語版が公表されるまで、日本語による公式情報がなかったこともあり、国内での取り組みは欧米系サプライヤーに比べて遅れ気味である。

Automotive SPICEは共通言語
 日本企業は、長い付き合いのある仲間内での「阿吽(あうん)の呼吸」で製品開発を進めてしまう傾向がある。「自社の標準プロセス」について、あまり必要性を感じておらず、仮に存在しても遵守しようという意識が低いため現場が臨機応変に変更してしまうことも少なくない。
 こうした柔軟な開発体制は、かつては日本の強みだった側面もある。しかし現在の経済環境においては、開発プロジェクトの規模や複雑さが増すと同時に、海外へのソフトウエア開発のアウトソーシングが進んでいる。企業の垣根を越え、国境を越えた新しいパートナーと共同作業をするための共通言語として「標準プロセス」が必要不可欠になってきている。
 この、ソフトウエア開発における「標準プロセス」を確立するために、欧州の完成車メーカーが共同で策定したのがAutomotive SPICEである。今後、欧州の完成車メーカーと取り引きする日本国内のサプライヤーも、これを「共通言語」として、完成車メーカーや協力会社とコミュニケーションする必要に迫られる。

日経オートモーティブ 解説
図●HISが要求するAutomotive SPICEの内容と参加企業
HISは車載ソフトウエア開発プロセス改善のために欧州メーカーが中心となって結成した業界団体で、この団体がAutomotive SIGの策定したAutomotive SPICEの業界内での導入を推進している。