日経オートモーティブ 技術レポート

日本精工の新構造ステアリングコラム
衝撃吸収能力を向上
安全性と使いやすさを両立

 日本精工は使いやすさと安全性を両立した新型ステアリングコラムを開発した(図)。衝突時のエネルギ吸収能力を高めながら、チルト・テレスコピック機構の操作感も向上させたのが特徴だ。Mg(マグネシウム)合金を多用して軽量化も達成した。

 開発した新型ステアリングコラムの第1の特徴は、車両衝突時に、ドライバーがステアリングから受ける衝撃を小さくするため、エネルギを吸収する性能を高めたことだ。衝突事故が起こった際に、ステアリングは軸方向に縮みながら衝撃を吸収することで、エアバッグとともにドライバーが受ける衝撃をやわらげる役割を果たす。今回開発したステアリングコラムでは、車体に取り付ける「ベース」に対し、ステアリングシャフトを取り付けた「スライダ」が、衝撃が加わるとスライドすることでエネルギを吸収する。

ワイヤをしごいてエネルギ吸収
 スライダには、ベースに固定されたワイヤが湾曲して引っ掛けてあり、衝撃が加わったとき、スライダは、このワイヤをしごきながらスライドする。このワイヤをしごくときの摩擦抵抗によってステアリングに加わるエネルギを吸収する仕組みだ。ワイヤをしごくエネルギ吸収機構そのものは従来から採用していたが、スライダが動き出す起動特性をボルトの締め付けトルクで調節できる機構を新たに採用した。また、同社の従来製品に対してエネルギ吸収ストロークも30%増やした。同じエネルギなら長いストロークで吸収することにより、ドライバーが受ける荷重を低くできる。

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図●日本精工が開発した新型ステアリングコラム
スムーズな操作感と確実な固定を両立した新開発のロック機構を採用した。