EMS(electronics manufacturing services)が電子産業を席巻している。その象徴が台湾Hon Hai Precision Industry Co.,Ltd.(鴻海精密工業,通称Foxconn)である。同社の連結売上高は3兆円を超え,現在も年率3割以上のペースで伸びている。米Apple Computer,Inc.やフィンランドNokia Corp.といった世界トップクラスの民生機器メーカーが,軒並みHon Hai社を重用しているからだ。

 EMSを活用した圧倒的な量産体制を武器に世界市場を押さえる。こうした時代の波に,日本の民生機器メーカーの多くは乗り遅れた。それでは今すぐApple社やNokia社と同様に巨大なEMS企業と連携すればよいかといえば,そういうわけにはいかない。家庭用ゲーム機やデジタル・カメラなどを除けば,日本メーカーの大半は当該商品でトップ5にも入らない世界シェアしか持たないからである。

 Hon Hai社に代表される巨大EMSは,兆円単位の売上高をさらに伸ばすために大口注文を特に重視する。最終商品の種類などにもよるが,1機種で月産数十万台以上を発注できなければ,「おざなりな対応をされてもしかたない」(国内携帯機器メーカー)というのが実情だ。