日経ものづくり 特報

好景気に沸くJIMTOF2006

加工コストをもっと低減


「予想外だ。こんなにもお客さんが来場するなんて」。工作機械メーカーの説明員からこうした声が上がるほど,「第23回日本国際工作機械見本市(JIMTOF2006)」の会場は,ここしばらく類がない熱気を帯びた。国内はおろか,海外への設備投資の勢いも衰えていないことから,「今すぐにでも現場で使いたい」という思いで来場し,機械を探し回った顧客が少なくないという。こうしたニーズを満たすべく,工作機械メーカーは“派手さ”はないが,即戦力志向の製品を展示した。キーワードは,加工コストの低減だ。(JIMTOF取材チーム)

 「自動車分野は堅い。例えば,トヨタ自動車は2008年まで工場を造ると宣言している。トヨタは言ったことはきっちりやり遂げるから,途中で下方修正することはないだろう。建設機械分野も依然好調。最近では,印刷機械分野の良さも目立ってきた。どの分野が特に(設備投資を)けん引しているかと聞かれても困る」(三井精機製作所の説明員)。
 2006年11月1日から8日間にわたって開催されたJIMTOF2006は,来場者の多さが際立った。景気回復を背景に日本に「ものづくりブーム」が起きた前回のJIMTOF2004から,来場者はさらに5%増加。その理由を知ろうと,どの分野の設備投資が旺盛かについて同社説明員に訪ねたところ,冒頭のような回答が返ってきた。
 来場者の多さは,言うまでもなく,日本の製造業の好調な設備投資を反映したものだ。国内だけでなく,海外工場の増強による需要が工作機械メーカーを潤している。しかも,これまでは自動車メーカーと,「中国特需」ともいわれた建設機械が需要の中心だったが,「今はあらゆる業界で万遍なく良いという状況。もちろん,浮き沈みもあるが,ある分野が沈んだら,別の分野が入れ替わるように復活する。だから,全体で見ると好調が持続している」(牧野フライス製作所の説明員)。
 こうした中,来場者は「いつになく,真剣なまなざし。本気で使いたい機械を探している証拠だ」(オークマの説明員)。こうした顧客の声に応え,各工作機械メーカーからは,実用性の高い製品の展示が相次いだ。

実切削時間をもっと短縮
 好況の波が来ているとはいえ,生産現場のコスト削減の要求はますます厳しくなっている。コスト削減で顧客が最も意識するのが,単位時間当たりにワークを何個加工できるかだ。今回のJIMTOFでは,競争の激化により,より速く削れる工作機械にいつも以上に顧客の注目が集まった。
 森精機製作所の複合加工機「NZ2000」は,三つの刃物台すべてにY軸移動機能を付加できる複合加工機(図)。二つの主軸,三つの刃物台が搭載できる複合加工機を発売するのは同社で初めて。三つの刃物台を利用した同時加工により,量産加工において加工時間を短縮できる。自動車部品や電気機器,油圧・空圧機器などの量産精密部品の加工に向く。
 三つのタレット型刃物台には,ビルトインモータを搭載。回転工具用モータの出力は最大で7.5kW,最大回転速度は6000rpm(オプションで1万2000rpm)で,重切削性と高速性を両立する。また,それぞれの刃物台には16本の工具を搭載できる。さらに下刃物台は,配線,配管をすべてカバー内部に配置し,切りくずの処理性を良くするなどで,長時間の無人運転に対応する。

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図●量産精密部品の加工に向く複合加工機「NZ2000」(森精機製作所)
価格は約4000万円。