日経ものづくり 中国的低価格部品選定指南

第12回
ヒータの安さの裏に発火事故
日本での調達先確保も大切

技術的に成熟しているヒータは中国市場で簡単に手に入る。価格も折り紙付きの安さだ。だが,品質には自己責任が問われる。中国メーカーに保証を要求してもそっぽを向かれることもしばしば。中国調達の100%依存は禁物だ。(本誌)

遠藤 健治 海外進出コンサルタント


 調理機器や空調機器といった家電製品だけでなく,産業分野でもヒータを利用する機械や設備はたくさん存在します。ヒータは他の部品と比べて技術的な成熟度が高いこともあって,実に多くの日本メーカーが大量に中国メーカー製のヒータを採用しています。
 それもそのはず。中国メーカー製のヒータの価格は,日本メーカー製の半分以下。安いものなら20%程度のヒータも市場で販売されています。これほどの価格差があれば,コスト削減に寄与することは間違いありません。
 しかし,いわゆる「枯れた部品」として甘く見るためか,最近は大手日本メーカーでもヒータの調達に失敗して製品のリコールを決定したり,不具合を起こして回収したりする例が発覚しています。実際,中国においてヒータはメーカーによる品質のバラつきが非常に大きなものの一つです。しかも,不具合が起きたときに中国メーカー側の対応には,あまり期待できないことが多いのです。
 不具合で製品が正しく動かなくなるだけでも問題ですが,ヒータは発火事故を起こして人体を傷付ける可能性もあります。従って,品質の悪いヒータを調達することは,メーカーとして最悪の事態をも招きかねません。
 実は,私も日系メーカーの中国工場で働いていた時に,中国メーカーから調達したヒータのトラブルに泣かされた経験があります。

火を噴くヒータ
 ある日,営業担当者が血相を変えて私のところに駆け込んできました。
「遠藤さん,大変です! うちの製品で発火トラブルが起きました!」
「ええ,発火した?! 本当に?!」
 顧客であるメーカーの担当者が,私たちが納めていた製品が発火事故を起こしたと,私たちの会社の営業担当者に電子メールで伝えてきたのです。しかも,リアリティーあふれる発火後の生々しい製品の画像が添付されていました。営業担当者はその画像をプリンタで印刷するや否や,私に報告しに来たのです。
 営業担当者から渡された画像を見ると,焼け焦げた部品が鮮明に写っています。ヒータを制御する半導体を搭載した部品の変わり果てた姿でした。ぞっとした私は,すぐにその半導体搭載部品を造って私たちに提供した台湾メーカーに出向きました。ところが,その台湾メーカーは技術力不足で解析ができず,発火原因が特定できないというのです。

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