日経ものづくり 詳報

需要拡大に沸く車載モータ市場
背景に「走る・曲がる・止まる」の電子化

新規参入や内製化の動きが相次ぎ,技術開発競争が始まる

 自動車向けモータ(車載モータ)やモータ材料の市場で,業界再編の動きが目立つ。日本電産は2006年10月20日,フランスの大手自動車部品メーカーであるValeo社の車載モータ事業を買収すると発表。同年11月6日には,日立金属がNEOMAXの吸収合併に向けて同社株式の公開買い付けに踏み切ることを明らかにした。いずれも,車載モータ事業の強化が目的だ。
 日本電産の狙いは,Valeo社の保有する開発・生産能力と販売網。「既に実績のある事業を買収することにより本格的に車載モータ事業への参入を行うことが最も有効」(日本電産)と判断した。
 一方の日立金属は,同社の軟磁性体とNEOMAXの磁石に関する技術開発体制を一元化する。NEOMAXはもともと日立金属の子会社だったが,個別にそれぞれの材料に特化している現状では材料特性の改善に限界があった。

基幹部品にも浸透
 車載モータ市場は,2005年にも神鋼電機やシコー技研といった企業が参入を表明するなど,業種の枠を超えて注目されている。なぜなら,車載モータの需要が急拡大しているからだ。自動車の生産台数自体が増えているのもさることながら,1台当たりに搭載されるモータの数が増えているのも大きい。富士通テン(本社神戸市)の予測では,自動車1台当たりのモータ数は2010年に100個超,2015年には200個超に達する(図)。
 このように二つの意味で拡大する市場のパイを獲得するため,多くの企業が車載モータ事業体制の強化を急いでいるわけだ。

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図●自動車1台に搭載されるモータ数の推移予測
富士通テン(本社神戸市)による予測。近い将来,自動車に搭載されるモータの数は100を超えることになりそうだ。『富士通テン技報』46号(2005年12月)掲載論文「CRAMASモータボードの開発」中の図を引用した。