「既存製品の単価アップではなく,一つ上のクラスを目指している」(三菱電機 リビング・デジタルメディア事業本部 家電事業部長の田代正登氏)――。普及率が高い成熟製品ゆえ,出荷台数の大幅な伸びが期待できない白物家電。家電メーカーは地道な努力でわずかな単価上昇を狙うか,何とか単価を維持するしか手はなかった。

 それが今,大きな転機を迎えている。実売価格が9万9800円の炊飯器や30万8000円の冷蔵庫といった,従来の各製品の最高価格帯を一気に数万円も上回る高額な白物家電が次々と登場しているのだ。平均価格と比べれば,3~10倍の価格である。上位機種のさらに上をいく,「高級家電」といえよう。

 家電メーカーがこうした高級家電を説明するのに用いる言葉は「万人にウケなくてもいい」「仕様で争わない」「モデルチェンジを毎年行わない」など,これまでの常識を覆すものばかりである。いずれも日本国内の富裕層もしくはこだわりを持つ消費者,さらにはアジア地域などの富裕層に狙いを定めている。