第1部<発想の転換>
それでも1チップを死守する 新世代のアナログが登場

 デジタル家電機器や,無線通信機器で利用する1チップLSIの混載アナログ回路の微細化に危機が迫る中,全く新しい動きがアナログ回路設計でじわじわと広がっている。アナログ信号の計測手法を,ガラッと変えてしまうことで,低電圧化に伴う電圧振幅の減少を乗り越えられるという,新たなアナログ回路の設計コンセプトだ。それを解くキーワードはズバリ,「時間」である。

第2部<時間分解能がカギ>
微細化で特性が向上
「TDC」が一躍注目株に

 微細化に伴って特性向上を進められる新世代アナログ回路の実現に向け,デジタル制御領域を増やした設計の提案が増え始めている。中でも高速ICでは不可欠となるPLL周波数シンセサイザにおいて全面的にデジタル制御手法を導入した「ADPLL」の実用化が進む。その内部の要となっているのが,信号計測を時間軸で行う「TDC」である。PLL回路のみならず,センサやA-D変換器などへ応用する動きも始まっている。

第3部<A-D変換器が変わる>
マイクロプロセサから始まる開発 性能向上や大幅コスト低減に道

 アナ―デジ混載のシステムLSIの低電圧駆動要求に向けA-D変換器の設計が変わり始めている。低電圧駆動に向いたアーキテクチャを採用する開発例がじわじわと増えているのだ。従来の主役であるパイプラインだけでなく,フラッシュ型や逐次比較型,mΣ型に注目が集まる。オペアンプを利用しないパイプライン型まで登場し始めた。