日経ものづくり タグチメソッド

PQEマトリックスを使ったD-QMS

最終回
まずは設計リーダー主導で導入
専門部署の活用などで組織力へ

齊藤 之紀
アジレント・テクノロジー R&Dプロセスコンサルティング

開発現場での設計品質マネジメントを強化する手法である「PQEマトリックスを使ったD-QMS」。これまでは,その全体像およびマネジメントを行うための製品開発計画の立て方や進捗管理の方法について解説してもらった。最終回となる今回は,同手法を実際に設計現場に導入し組織力として定着させていくための方法について解説してもらう。(本誌)

 前回までに「PQEマトリックスを使ったD-QMS」(以下,PQEメソッド)によって製品開発プロジェクトを計画し管理する流れを述べた。恐らく,これだけのことを実施するのは大変なことだと感じた方も少なくないのではないだろうか。そこで今回は,設計現場のリーダークラスの人が中心になって同手法の導入/定着に取り組む場合を想定し,その具体的かつ有効な進め方とポイントを紹介する。

第1段階:リーダー主導で導入
 PQEメソッドを導入/定着を目指す上で最初に目標とすべきは,設計の実施現場で設計品質の作り込みと保証を習慣化することである。そのために,まず現場のリーダーに求められることは,次の2点である。
(1) 設計品質を計画し,チェックする
(2) リーダー自らが率先垂範して実施
 設計品質のチェックを,レビューで実施しているプロジェクトは多いだろう。しかし,設計品質を計画として策定していないのに,漏れのない網羅的なレビューが可能だろうか。その場で考え思い付きに頼るレビューでは,設計で品質を作り込むことは難しい。
 PQEメソッドの鍵は,最初に設計品質を計画することである。設計品質は,上位の仕様書や設計目標を担当者に割り当てたらすぐに計画させる。本連載の第2回で述べたように,設計目標とその達成基準や評価基準,そこに至る設計/検証/実験の方法を最初に考えさせるのである。現在は,ただ仕様書を渡して,作業の線表を引くだけで計画完了としていないだろうか。これでは「設計時間を消化し,設計書が形になったら設計は完了」といった程度の判断しかできないだろう。
 開発の初期段階で目標とする設計品質を明確にできれば,第一に担当者が目標を持って仕事をしやすくなる。それと同時に,設計者本人以外にとっても充実したレビューを行いやすくなるのである。そればかりか,公式のレビューを待たずに設計の実施段階から週単位の進捗管理ミーティングで設計品質を確認する,といったことも可能になる。