日経ものづくり 詳報

高速で動く圧電素子型アクチュエータ
てこの原理でストロークを拡大

メカノトランスフォーマが開発

 アクチュエータの専門メーカーであるメカノトランスフォーマ(本社神奈川県川崎市)は,ヘッドが高速で直線運動するアクチュエータ「メカトランス」を開発した(図)。駆動源に圧電素子を採用し,ms単位で高速に動作する。電気エネルギを機械エネルギに変換する効率も「約30%」(同社代表取締役の矢野健氏)と高い。既に,回路基板の絶縁に使うセラミックス基板の焼成前のグリーンシートのパンチングマシンに採用例がある。
 メカトランスは,全体が「弓」を引いた状態のように変形した七角形の構造。中央に細長い圧電素子を据え,その周囲を固定部で支持する。この圧電素子の先端には弓状の「変位拡大機構」が付く。変位拡大機構は左右に分かれており,それぞれ後端に2本の接続部を持つ。一方が圧電素子側,他方が固定部側との接続部だ。
 変位拡大機構の前方には固定部との間にコイルばねを挟んだ。これにより,変位拡大機構と固定部のすき間を拡大する方向に(外側に)復元力を持たせ,圧電素子に与圧を加える。そして,変位拡大機構の先端には板ばねをスポット溶接し,左右の板ばねが伸びる交点,すなわちメカトランスの先端となる部分にヘッドをスポット溶接した。
 固定部と変位拡大機構はステンレス鋼の一体物で,ヘッドもステンレス鋼製。また,固定部には隅の4カ所に貫通穴が開いており,メカトランスを機械や設備側に固定できる。

てこの原理で変位を増大
 圧電素子に100Vの電圧を加えると,圧電素子は10数μm伸びる。すると,変位拡大機構の後端にある固定部側の接続部を支点として,圧電素子が変位拡大機構を押し上げる。その結果,てこの原理で変位拡大機構の先端が大きく動き,それに応じてヘッドも大きく変位する。このヘッドのストロークは圧電素子の変位の10~100倍に調整できる。逆に,推力は変位に反比例して小さくなる。そして,電圧の印加をやめると圧電素子は元の長さに縮み,ヘッドの位置も元に戻る仕組みだ。

日経ものづくり 詳報
図●ヘッドが素早く直線運動するアクチュエータ「メカトランス」
駆動源に圧電素子を使い,変位を増大する機構を採用してヘッドのストロークを大きくした。