日経ものづくり 直言

「超系列」で競争力向上
進んで「他流試合」に挑め

カルソニックカンセイ 名誉顧問
早稲田大学 日本自動車部品産業研究所 副所長
大野 陽男


 「超系列」。筆者が1997年11月,ある雑誌の中で初めて提唱し,大きな反響を呼んだ言葉である。
 日本の自動車産業は戦後の復興期から高度経済成長期を通じ,モータリゼーションの波に乗って大きく成長した。その過程では,自動車の付加価値の7割を担うといわれる部品メーカーの育成が自動車メーカーの大きな課題であった。そこで部品の品質向上やコストダウン,生産性向上などを目的として,部品メーカーに「資本と人」を送り込んだ。指導・育成に取り組むとともに自動車メーカーを頂点とするピラミット構造を形成。これが「系列」である。
 系列関係は日本の自動車産業が世界一の地位に上り詰める上で大きく貢献した。しかし,この「資本と人」の関係が過ぎると甘えが出て1社依存体質となり,部品メーカーの技術力とマーケティング力,経営力を弱めてしまう。資本の面では取引関係の固定化や他社への拡販活動の制約,技術的改善提案の凍結,人の面では天下りの押し付け人事や適材適所に反する人事配置,といった弊害が生じた。

日経ものづくり 直言
大野 陽男
1958年早稲田大学法学部卒,1987年日産自動車取締役,1989年同社常務,1991年北米日産社長,1993年カルソニック社長,2000年カルソニックカンセイ会長,同年自動車部品工業会会長。 1981年マツダ入社。1994年神戸大学助教授,1999年から現職。2001年から経済産業研究所ファカルティフェロー兼任。経営学博士(MIT)。