「一般には高速化が難しいとされる直接変調型の半導体レーザにおいて,40Gビット/秒の動作に成功した。実用化で重視される発振しきい値電流の低さは,世界トップ・レベルにある」(日立製作所 中央研究所 光デバイス研究プロジェクト 主任研究員の中原宏治氏)。日立製作所がこう胸を張るのが,GaInNAs活性層を用いた直接変調方式の半導体レーザである。直接変調は,変調した電気信号をレーザに直接加えて発振させる方式である。取りあえず安定なレーザ光を発振させその後で変調を加える外部変調方式と比べると,一般に波長の精度が粗く高速化や長距離伝送が難しいが,小型化できるのが特徴である。

 光通信で用いる長波長帯の1.29μmで半導体レーザを発振させる場合には,しきい値電流が大きくなる傾向がある。日立製作所によると,他の研究機関による試作品の発振しきい値電流は10mAを超えているが,同社は4.4mAと極めて低いしきい値電流で発振することに成功した。しきい値電流に達するまで発振しないことから,低消費電力化や発熱量低減に役立つ。さらに高速化にも有効という。この技術を用いた半導体レーザの消費電力は,現在実用化されている外部変調型の半導体レーザの8Wに対して,2W程度に抑えられるとみる。