日経ものづくり 材料力学マンダラ

第21巻
静的荷重から急速荷重へ

広島大学大学院教授 沢 俊行


●静的な扱いでは解けない,急速荷重が作用するケース
●軸や応力の形態に応じて「修正係数」を導入する
●軸径の決定には「破損のクライテリア」2説を活用


 ここ数回にわたり,弾性体にねじりと曲げモーメントの複合荷重が作用するケースを扱ってきました。これだけしつこくやってきたのは,かかる問題が機械工学上極めて重要だから。しかも厄介なので,自然とページ数を割いてしまいました。が,それも今回が最後となります。
 図は,左端を固定し(点Bで支持し),右端にプーリを取り付けた軸。こうした軸や梁にねじり荷重が作用する場合,これまでは静的に作用すると暗に仮定してきました。しかし現実の問題は,それだけでは対応できません。例えば,クルマの車軸を考えてみてください。信号で停止しているクルマが急に発進する。そのとき,車軸は急速に回転し始めます。これは明らかに,これまでの静的なケースとは違います。
 今回はこうした問題を扱っていきますが,考え方自体は静的なケースと大きく異なるわけではありません。そこでまず最初に,重要な式を復習しておきましょう。

日経ものづくり
図●左端を固定し(点Bで支持し),右端にプーリを取り付けた軸
軸には曲げモーメントMとトルクTが作用。特にトルクTにより,ねじり振動が加わる。