日経ものづくり 詳報

国土交通省が技術検証部門を設置
相次ぐリコール隠しの断絶狙う

調査するのは元メーカー技術者

 国土交通省は,自動車のリコールに関する技術検証能力を強化する。関連団体の交通安全環境研究所に,事故・不具合情報の検証やメーカーへの聞き取り調査を手掛ける「リコール技術検証部」を2006年5月19日に設置(図)。同年6月に同部部長が就任し,正式に業務を開始した。狙いは,近年相次ぐリコール隠しの撲滅である。

企業は悪いことをしているかも
 リコール技術検証部を設置したきっかけは,2004年に発覚した三菱ふそうトラック・バス(本社東京)の大規模リコール隠し。もちろん,国交省は定期的に監査を行っていた。しかし,同社のウソを見破れなかった。「正直な話,書類審査だけでは(意図的に隠されているリコール相当案件があるかどうか)分からない」(同省自動車交通局審査課リコール対策室専門官の中村保氏)。盲点だった。
 これは,監査制度が「企業は基本的に悪いことをしない」という前提で定められているからだ。同省が自前の検証部門を持つのは,そのような発想から「企業は悪いことをしているかもしれない」という発想に切り替えたことを意味している。
 同じくリコール隠しの疑いでトヨタ自動車の品質関連部門歴代部長3人が熊本地方検察に書類送致されるなど,メーカーによるリコール隠しの話題は尽きない。今回の国交省の決断は,必然の流れといえる。

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図●リコール技術検証部の役割 国土交通省が自動車メーカーに対して調査指示やリコール勧告・命令を出す上で,根拠となるような技術的検証を担当する。メーカーへの聞き取りなどは,国交省を通じて行う。交通安全環境研究所の資料を基に本誌が作成した。