日経オートモーティブ 解説

トヨタ自動車は2006年6月13日に環境対応技術の開発状況と、今後の低公害車の展開について発表した。2010年までにガソリンエンジンと変速機を一新するほか、ハイブリッド車の開発ではプラグインハイブリッド車の開発を推進することを初めて表明した。またエネルギ多様化にも配慮し、バイオエタノール車の普及も進めていく。

 トヨタの渡辺捷昭社長はCO2削減と燃費向上、排ガスのクリーン化、エネルギ多様化への対応を目指し、環境対応技術の開発と環境対応車の市場導入を強化すると発表した。具体的な施策として?@ガソリンエンジンと変速機を2010年までに一新、?Aハイブリッド車の車種倍増とプラグインハイブリッド車の研究開発推進、?Bバイオエタノール燃料対応車の導入――の三つを挙げた。

排気バルブも連続可変
 ガソリンエンジンと変速機の刷新では、2003年発売の「クラウン」から導入し始めたV型6気筒の「GR」型を始めとし、2010年までにガソリンエンジンと変速機を、環境性能の優れたものに一新する。今回の発表では、2006年秋に発売予定の新型車に搭載するとみられる排気量1.8L・直列4気筒ガソリンエンジンの「2ZR-FE」を公開した〔図〕。
 同社は2005年度までにすべての車種で「2010年度燃費基準」を達成しているが、新たな目標として、今後乗用車モデルの大部分において「2005年基準排ガス75%低減レベル」と「2010年度燃費基準+10%」を、2010年に達成することを目指すことも表明した。
 今回公開した2ZR-FEエンジンも、CO2排出量を削減するための燃費改善を実現しており、併せて同クラスでのトップレベルの性能を目指した。新エンジンはDOHC16バルブで、従来の「ZZ系」のエンジンが吸気側だけに連続可変バルブタイミング機構を備えていたのに対し、ZR系は排気側にもバルブタイミングの連続可変機構を設けたのが特徴。これによりポンピング損失を低減した。
 排気側のバルブタイミングを変えられるようになったのを利用し、低負荷域ではバルブのオーバーラップを大きくする。スロットルバルブが閉じ気味だとピストンが下がるときにシリンダ内が負圧となってポンピング損失が発生するが、ここで排気バルブを開いておくと排気ポートからも空気が流れ込むので損失を小さくできる。さらに低張力ピストンリングを採用した軽量ピストン、ローラロッカアームの採用などにより摩擦損失も減らした。この、排気側にも連続可変バルブタイミング機構を備えるのが、新世代エンジン共通の特徴だという。

日経オートモーティブ 解説
図●展示された新世代ガソリンエンジン
排気量1.8L・直列4気筒の「2ZR-FE」(a)と、「レクサスLS460」に搭載予定の排気量4.6L・V型8気筒の「1UR-FSE」(b)。