日経ものづくり キラリ輝く中小企業

スリーテック

電子機器開発のスリーテック
対等な連携でEMSを確立

 スリーテックは,企業連携による各種電子機器のEMS(Electronics Manufacturing Service=電子機器生産受託サービス)を手掛ける会社である。従来のEMSは,発注元の大企業や商社が中小企業に対して,回路設計,実装設計,部品調達,製品組み立てなど,工程別に製造委託する形態がほとんど。しかし,これだと中小企業は下請けにとどまり,たとえ高い技術力があっても,持ち味を十分に生かすことは難しかった。
 これに対しスリーテックのビジネスモデルは,同社がコア企業になって中小企業に分散している高い技術力を結集し,設計から組み立て・量産に至る全工程を一括管理して優れた製品を生み出すというもの。「従来のEMSがハブ型の垂直連携だったのに対し,我々が実施しているのは個々の企業の自立と自主性を尊重したリム(環状)型連携」と同社は位置付ける。

試作1枚から量産まで
 スリーテックの設立は1991年。当初は,電磁干渉の回避や熱対策を得意とする電子基板のパターン設計の専門会社だった。そんな中,顧客から基板の設計から実装,製造に至る開発品の見積もりを依頼されたことが業態を変えるきっかけになった。8年前のことだ。
 「総額約700万円の仕事で,当社にとっては大きな商談だった」とスリーテック社長の久野啓一氏は振り返る。しかし,その仕事をある外資系企業に600万円の受注額で落札されてしまう。後学のために,顧客に落札会社の事業形態を尋ねると「組織がしっかりしていて,世界的な規模でやっているEMS会社」だという。その会社ではスケールメリットを生かして,設計から製造までを一気通貫でこなしていたのだ。

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●スリーテックがパターン設計したサーボ・モータ・コントローラ
東京大学が開発した小型ヒューマノイド・ロボットに搭載。20Aという大きな瞬時電流のDCモータドライバおよびPID(比例・積分・微分)制御が特徴。


酒井製作所

工学理論に基づく製品造り
変速機と継ぎ手の酒井製作所

 酒井製作所は,ベルト式無段変速機と精密軸継手の専門メーカー。1945年に近隣工場の機械修理の下請けとして創業。それから数年後,取引先から米国企業のカタログを見せられて「こういうものを造ってくれないか」と依頼されたのが,無段変速機を手掛けるきっかけになった。
 1950年にベルトのスリップ防止機構で国内特許を取得。本格的にベルト式無段変速機の製造販売を始める。入力シャフトと出力シャフトにそれぞれプーリを取り付けてベルトをかけるもので,プーリは中心部が厚く外周部で薄い円板を2枚合わせて構成する。円板同士が近いと中心近くではベルトが通るだけのすき間がないから,ベルトは外周部を通る。逆に円板同士が遠いとベルトはシャフトの近くを通る。円板の間隔を調整することで無段に変速できるわけだ。
 当時は繊維機械の全盛期で,機械駆動部のスピード調整などに使われた。1960年代になると,繊維機械に代わって包装機械や食品搬送ラインに使われ始める。食品メーカーのクノール食品やキユーピーの搬送ラインには今も酒井製作所の変速機が使われており「両社とも既に40年来の付き合い」(同社)という。

変速機の技術を軸継ぎ手に応用
 しかし1960年代まで,無段変速機には大きな問題があった。破損がひんぱんに起こり,そのたびに修理しなければならなかったのだ。「最初は因果関係がさっぱりつかめなかったが,米国から資料を取り寄せて調べるうちに,プーリとシャフトのしゅう動面に微動摩耗(フレッチング)による焼け付きが発生していると分かった」と酒井製作所社長の酒井義孝氏は述懐する。

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●精密軸継ぎ手の主力製品
左からRA-C(固定軸継ぎ手),LAD-C(板ばね・ダブル),LAS-C(板ばね・シングル),UA-C(補正軸継ぎ手)。