日経ものづくり 事故は語る

圧力容器の爆発で炎上した製油所
水素を含むミストで鋼板が減肉

2006年4月16日午前5時37分,千葉県市原市にあるコスモ石油千葉製油所内に,爆発に伴うドーンという鈍い衝撃音が響き渡った。同時に,同社従業員が減圧軽油脱硫装置の付近から火災が発生しているのを発見。幸いけが人はなく,消火活動によって3時間余りたった午前8時44分には鎮火した。

 爆発が起こったのは,コスモ石油千葉製油所の敷地のほぼ中央に位置する「減圧軽油脱硫装置」に隣接した「水素製造装置」とみられている。2006年4月16日午前5時10分ころに,同社の従業員が定例の現場パトロールをした際には,付近に特に異常は認められなかった。しかし,そのわずか30分後に爆発が起こった。
 この爆発によって,装置の一部や配管が破損しガスや油が流出。漏れた油に着火して火災となったもようだ。約500m2が焼けたが,当時所内にいた57人の従業員にけがはなく,有毒ガスの発生などの被害も認められなかった。
 同製油所は,国内第4位となる24万バレル/日の原油処理能力を持つ。二つの処理系統があるが,事故のあった13万バレル/日の能力を持つ系統の操業を停止したため,一時的に処理能力は半分以下となった。同年6月13日には,ほぼ従来通りの操業に回復したが,同社の発表によれば損害額は100億円程度になる見込み。
 同社は,事故から2日後の4月18日に同社の常務取締役を委員長とし,学識経験者や関係機関などのメンバーから成る「千葉製油所 減圧軽油脱硫装置/第一水素製造装置 事故調査委員会」を設置した。今も事故の原因と再発防止策を調べており,2006年6月半ばの時点でまだ最終的な結論には至っていない。
 しかし,同委員会にオブザーバーとして参加している千葉県商工労働部保安課によると,水素製造において水素を精製するための工程に使う容器の一部が減肉し,内部の圧力に耐えきれずに爆発したのが原因と推定されている。

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図●爆発の推定メカニズム
水素の製造過程において,水素を含んだミストを特殊な溶液と接触させて不純物である二酸化炭素などを溶解させている。爆発したのはその工程を担う容器。内壁が直接ミストと接触したために腐食が進行し,減肉して内圧に耐えきれずに爆発したと推定されている。