日経ものづくり 開発の鉄人

第26回 ニッチでも,トップならやっていける

「開発の鉄人」こと 多喜 義彦

石川県が,ものづくり支援のために新しい方針を打ち出した。
ニッチでいいから,その分野でトップを目指す。
そうした姿勢を見せる企業には,自治体が支援する。
知的財産に関しても,しっかり指導する。
目標とする前例は「すしコンベヤでトップシェアを取った会社」。
こんな事例を次々と登場させることが狙いだ。


 前回に続いて「官」の話にお付き合いいただこう。3月号の日高グループ,5月号のオリエンタルチエン。ここしばらく,石川県の話題が多いことにお気付きだろうか。実はちょっと事情があってね,石川県に通い詰めている。

ニッチトップを集中育成
 石川県庁が「ニッチトップ企業等育成事業」というものを始めた。「ニッチの中でのトップ」を目指す企業を認定して,集中的に育成しようというんだ。それで協力を求められている。前回も言ったように,お役所は大切に考えているから,呼ばれたらホイホイ行っちゃう。
 石川県には危機感がある。東北もそうだけど,ここも良い所なんだよ。住むにはね。民間の空港が小松,能登2カ所。ほら,これだけで東京に勝ったでしょ。人口100万人当たりの高等教育機関の数は16.1と全国2位。道路の整備率は全国3位,博物館,美術館は5位だ。
 ただし,それが生産に表れていないことも確かだ。1992年には35.9%あった移出率が2001年には30.6%まで落ちて全国32位。福井県は34.6%,富山県は33.7%だ。東京や大阪と争う気はないだろうけど,両隣に負けちゃ悔しいよね。
 それが一つの動機になった。「ニッチトップ企業」を目指して成長するモデル企業を輩出することによって,石川県全体の競争力を上げようというわけだ。

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図●企業認定と支援のイメージ
ニッチトップ予備軍を選んで集中的に支援する。