CMOSセンサの進化

国内撮像素子メーカーにてCCDCMOSセンサの開発を手掛けた経験を持つ黒田隆男氏の講演内容を基に,本誌が整理した連載の2回目。今回は雑音が大きいという最大の課題をCMOSセンサが克服してきた経緯や,今後の発展の可能性について解説する。 (大槻 智洋=本誌)

 前回のCCDに続いて,最近急速に普及してきたCMOSセンサについて歴史と展望を解説する。CCDとCMOSセンサの最大の違いは,光を受けたフォトダイオードが生み出した電荷を読み出す方法にある。CCDと異なり,CMOSセンサには雑音が非常に少ない電荷転送に特化した回路がない。このため長年,CCDに対してS /N の面で劣っていた。

 この一方でCMOSセンサにはさまざまな特徴がある。例えば,その名前が示すように,半導体として一般的なCMOSプロセス技術を使うため,製造設備の転用などによってコストを低減しやすい。さらにメモリなど,ほかの半導体でCMOSプロセスの微細加工技術が進歩するので,この恩恵を受けることができる。もちろん,CMOSプロセスで作る,撮像素子以外の回路を集積することも容易である。駆動電圧がCCDより低いので電力の消費も抑えられる。