Cambrios Technologies社は,たんぱく質の自己組織化現象を利用して,微小な配線を有する半導体や薄膜を形成する技術を開発した。特定の金属元素や無機化合物と親和力を有するたんぱく質を特定条件下で反応させることで,たんぱく質の自己組織化によって金属元素や無機化合物を整然と並ばせることができる。これを応用すれば,例えばLSIの配線工程でマスクやリソグラフィを利用せずに所望の個所に選択的に配線層を形成したり,従来手法では困難だった3次元構造物における薄膜形成に利用したりできる。反応は溶液中において低温で進むため,真空装置や高温にするための装置の利用工程数削減などによって,製造コストを低減できる可能性もある。形成原理と,この原理を応用して試作した透明電極フィルムに関する測定試験結果を報告する。 (蓬田宏樹=本誌)

Hash Pakbaz
米Cambrios Technologies Corp.
Vice President,Business Development


 我々はたんぱく質を機能材料として用い,微細配線や薄膜を形成する技術を開発した。たんぱく質の自己組織化現象を利用して,微細な構造を溶液中で形成するものである。半導体や液晶ディスプレイの製造工程に応用すれば,現行の製造技術に比較して将来的にコストを低減できる可能性を秘める。

 既にこの製造手法を使って微細な配線を形成したり,薄膜を形成したりできることを確認している。2008年ころをメドに,液晶ディスプレイなどの製造工程に実際に適用することを目指しており,既に複数の製造装置メーカーと交渉を進めている。本稿では,我々がたんぱく質を機能材料として利用するに至った経緯や形成原理,その原理を応用して試作した透明電極フィルムの特性などについて述べる。