「世界一良いモノを,世界一早く,世界一安く,提供したい」——。2006年5月25日に開催された「自動車技術会春季大会」の基調講演で,トヨタ自動車 取締役社長の渡辺捷昭氏は「Sustainable mobility社会への取り組み」と題した講演を行った。自動車技術会で大手自動車メーカーの社長が自ら登壇するのは珍しく,日本の自動車産業が今後も進展していくためには,より一層の技術強化が必須であるとのトップの強い思いが表れていた。

 同氏によれば現在,世界では5年間で約1億台ずつ自動車の保有台数が増え続けており,日本の自動車産業もグローバル化のさらなる進展と再生循環型社会の確立が必須とした。環境分野ではクリーン・エネルギーを使う時代が到来しており,トヨタ自動車は2010年代の早期にハイブリッド車の年間販売台数を,現在の30万台弱から100万台に引き上げるという。一方,安全分野では無線通信で自動車同士や,自動車と道路の間で情報をやりとりして衝突事故を防ぐ「インフラ協調システム」を2010年代に実用化する。しかも,同システムを導入するモデル都市として愛知県豊田市を特区にする構想を明らかにした。