「今まで行ってきた通信事業者の基幹ネットワークに向けた研究開発はあくまで投資のようなもの。これからは家庭内での光通信装置が本当の稼ぎ頭になると期待している」——(ある光送受信モジュール技術者)。

 FTTH加入世帯で利用する光電変換など光部品関連の新しい技術が次々と実用化,あるいは量産化に向けて動きだしている。沖電気工業は2.4mm角Si基板に光素子を自動的に実装した光送受信チップを開発,シグマ・リンクスと共同でこのチップを利用した光送受信モジュールを開発した。新構造を採用することで部品点数や製造工程を削減しており,「自社従来品に比べて約2/3のコストで製造できる」(シグマ・リンクス 研究開発部 担当部長の西出研二氏)という。三菱電機は量産化を視野に入れ,レンズ枚数を削減することで低コスト化を図る光送受信モジュールを開発した。古河電気工業も光軸合わせの工程を削減した光送受信モジュールを試作している。

 こうした新しい部品に利用する要素技術の中には,かなり以前に開発されたものも含まれる。それが今,一斉に実用化に動きだしたのは,FTTHの普及が始まったことが大きい。例えば沖電気工業のチップで利用するSi製レンズは2002年に開発されたものである。しかし,当時はFTTHの加入者の増加数はまだ少なく,量産に踏み切れなかった。それが今,「FTTHが好調で,採算ラインを超える出荷を見込めると判断した」(同社)という。