日経ものづくり キラリ輝く中小企業

東洋理工

プラめっきの東洋理工
金属の質感を樹脂で演出

 東洋理工は,米国で発明されたプラスチックめっき(以下,プラめっき)の国産化を目指して1964年に設立された会社である。
 創業当初はラジオのスイッチやボリュームのつまみといった家電部品のめっきが主であったが,1968年に自動車ミラーメーカーの村上開明堂(本社静岡市)からフェンダミラー用リングのめっき加工を受注してから,自動車部品へ進出。現在では,ドアミラー,ドアハンドル,ヘッドランプなどの外装品やカー・ナビゲーション・ガニッシュ(パネル),計器リングなどの内装品にまで対象範囲を広げている。二輪車では,計器カバーやマフラ・カバー・キャップなどに採用されている。
 東洋理工の特徴は,めっき加工を中心としながらも,金型設計から治具製作,成形,めっき,蒸着,塗装,組み立てと,プラスチック部品の一貫生産体制を整えている点。「最初はめっき専業だったが,支給される材料成分によってはめっきができなかったり,成形の不具合から品質にバラつきが出たりした。それならばと,自前で材料手配や成形を手掛け,1980年代半ばには金型製作や塗装,組み立てラインなどを加えた一貫生産体制を整えた」(東洋理工社長の横山真喜男氏)。

PAめっきで日本一の加工量
 ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)樹脂やPP(ポリプロピレン)などの汎用プラめっきに加え,エンジニアリング・プラスチック(エンプラ)のめっき加工に着手したのも早かった。約10年前,ヤマハ発動機の米国向け二輪車に採用されたPA(ポリアミド,ナイロン6)製部品がその例である。

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●ABS樹脂めっきを使用したドアミラー


セキコーポレーション

精密プレス加工のセキ
金型内組み立てで一躍脚光

 全世界で数千万台の販売台数を誇る,ソニー・コンピュータエンタテインメントのゲーム機「プレイステーション」。その本体に組み込まれる機構部品を造っているのが,金属精密プレス加工業のセキコーポレーションだ。ほかにも,ポータブルMDプレーヤーなどのAV機器や事務機用部品などを製造している。
 1948年,先代が東京都港区白金で創業した。主に電話機に使われる部品加工を手掛け,当時の電電公社の「厳しい品質要求の下で,高精度の加工や品質技術が鍛えられた」(セキコーポレーション社長の関重和氏)。
 高度成長期を迎えると,家電製品の需要が伸び,オーディオ関連や家庭用ビデオ部品などもラインアップに加えた。中でも得意としたのが,カセット・テープ・レコーダーのメカシャシー。このときの技術力を買われ,ソニーから初代「ウォークマン」のメカデッキ組み立てを一括受注。これが今日の経営基盤につながった。
 しかし最近は,どんなに技術力があっても,国内の量産部品メーカーは海外との激しい競争に直面している。セキコーポレーションとて例外ではない。そこで同社では,1988年にシンガポールに生産拠点を構えたのを皮切りに,1994年にマレーシア,2003年には中国へ進出を果たす。「当社としては,顧客企業の海外進出に歩調を合わせただけ。特に先手を打とうなどという意識はなかったが,結果として早い決断が良い効果をもたらした」(同氏)。量産ものは海外,難易度の高い生産活動は国内という,開発と加工生産のすみ分け体制が比較的早い時期から実現できたからだ。売上高こそまだ国内の方が多いが,利益は国内と海外でほぼ半々。利益率はここ数年,6%強を維持している。

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●金型内組み立ての最初の量産品
ソニー「ウォークマン」に採用されたカセットふたロック機構。