日経ものづくり 特報

業務の視点で基盤充実
進化するIT活用



業務プロセスの整備が先か,ITシステムの導入が先か。ITを使いこなす上での古くからの課題だったが,今後は意味がなくなってくるかもしれない。IT利用の第2段階に進んだユーザーが取り組んでいるのは,ITの利用を目的としたデータ類や業務の流れの整備。“試作の山”と決別し,データ主体で製品の完成度を高める基盤を,ITの基盤の上に整えているのだ。「コラボレイティブ・ものづくりデイ2006」では,そうした先進ユーザーの講演が相次いだ。

 「目指すのは,必要な情報が一気に集まること」(マツダ)。設計開発と生産にITシステムを利用する上で,さまざまな企業が基盤整備を整えつつある。
 ITシステムが業務の基盤であることは,当たり前かもしれない。しかしこれまで,業務はITを使うものと,ITを使わないものの両方があった。これでは業務の基盤とは言い難い。業務に使う情報は,デジタルデータで完結していた方が効率的であるのは明らかだ。
 先進ユーザーは高度な自動化処理をITシステムで実現するより前に,さまざまな情報を必要に応じて引き出せる仕組みの構築が大事であることに気が付いた。以下に,本誌主催のセミナー「コラボレイティブ・ものづくりデイ2006」の特別講演から,「3次元CAD・データ管理システム」「シミュレーション・ツール」「生産管理システム」の三つの局面における,ITと業務の基盤整備の進展状況を見ていく。

3次元CAD・ データ管理システム

 3次元CADを本格的に運用するためには,データ管理システムが基盤として不可欠だ。以前のデータ管理は,CADデータや部品データを再利用可能なように蓄積するところにとどまっていた。現在はもう一段階進めて,設計者が日常的に参照したり,あるいはシステムが自動処理を進めたりできるよう,用途を具体的に想定した上でデータを整備する例が増えている。

標準化,モジュール化をITで後押し
 リコーの設計改革は「作らずに創る」ことを目標にしている(図)。これをブレークダウンして五つの軸を設定しているが,中でも注目できるのが(1)物理的にものを造らず3次元データによる仮想的な試作と検証を活用すること(2)モジュールと部品の標準化を進め,機種間でのモジュールの共通利用を推進することで新規開発の工数を削減すること―の二つの軸だ。残りの3軸も含めて,ITの利用が表裏一体になっている。

日経ものづくり 特報
図●リコーによる設計開発改革の五つの軸
「作らずに創る」が大テーマ。五つの軸の中でも(1)物理的にものを造らず3次元データで設計検討を進めることと(2)モジュールや部品の共通利用で新規開発の工数を削減すること―の二つが注目できる。リコー開発革新センター3D設計推進室室長の佐藤敏明氏の資料を基に作成。