日経ものづくり キラリ輝く中小企業

クマクラ

精密加工のクマクラ
機械開発でノウハウを磨く

 10数年前までクマクラは,依頼のあった図面通りに金属機械加工を行う,典型的な下請け企業にすぎなかった。しかし今日では,事業のメインは他社が手掛けない脆性材料の加工やそのための機械開発など,時代の先端を行く企業へと生まれ変わっている。
 事業転換を図ったのは,プラザ合意後の不況が町工場の台所を直撃し始めた1980年代の半ば。「下請けに甘んじている中小企業は,容赦なく淘汰される時代が来た。生き残っていくためには,それまで培った精密加工技術をリニューアルして,独自性のある事業へと転換することが必要だと考えた」とクマクラの創業者であり現・代表取締役会長の熊倉賢一氏は語る。

研究者との共同開発に活路
 クマクラにとって強い味方となったのが,大学や大手企業の研究者仲間である。熊倉氏は前職が機械振興協会技術研究所の研究員だったこともあり,多くの研究者を知り合いに持っていた。友人である研究者たちから先端技術の話を聞くうちに,機械を開発して加工技術の向上を図る着想を得,彼らとの共同研究にその活路を求めた。
 例えば,自社製品には「振動アシスト多目的マイクロ加工機」という,ガラスやセラミックス,シリコンなどの脆性材料に微細な穴を開ける機械がある。4cm角のガラス板に125μmの穴を最大256カ所開けることが可能だ。この機械は友人である研究者の協力を得ることで,製品化が実現できたものだ。

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●超音波振動テーブル「Assist」
加工時に,テーブルごとワークを振動させる。


光機械製作所

専用研削機の光機械製作所
機械と工具双方を知る強み

 光機械製作所(以下,光機械)は,2006年で創業60年を迎える専用研削機の老舗メーカー。紡績機械の製造でスタートしたものの精度を高めるために必要な平面研削盤が見つからず,自ら製作したことが今日の業態につながった。最初は汎用機を製造するも,景気変動の影響を受けやすいことから,1960年代半ばに専用機に事業転換し成長軌道に。専用機のほとんどは一品生産で,受注1件ごとに高度な技術革新が求められる。同社は長年にわたってそれをこなし続けてきた。

1チャックで4カ所研削
 光機械が得意とするのは,超硬工具や石英ガラスなど高強度/高脆性の難加工素材を最適条件で研削することだ。素材の特性を把握し見極めた上で,最適な動きをNC制御技術で高精度に自動化していく。その代表例が,機械の両側の砥石送りをNC制御し,ワークの上下面を同時に加工するNC両頭平面研削盤と呼ばれる機械。剛性も加工速度も高いため,高脆性のワークの研削に際立った性能を発揮するという。
 多面加工の機械や複合研削盤の開発実績も豊富だ。一例を挙げると,時計バンド用の外周研削盤がある。バンドを構成する一つひとつのコマの外周形状を研削加工するための専用機だ。機械は3台で構成。同時に同じ加工を実施して生産速度を上げたり,大きさの異なるコマを別々に加工したりできる。

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●両頭平面研削盤
機械の両側にある砥石送りをNC制御することで,ワークの上下面を同時に加工する。