日経ものづくり2006年5月号
材料力学マンダラ

第17巻 複数の応力の作用には警戒を

2006/04/30 21:18
日経ものづくり 材料力学マンダラ

第17巻
複数の応力の作用には警戒を

広島大学大学院教授 沢 俊行


●組み合わせ応力も,単独応力をベースに考える
●延性材料の破壊に合うのは「最大せん断応力説」
●脆性材料の破壊に適合するのは「最大主応力説」


 この連載の最初で,ある化成品工場でクレーンアームを塗装するための作業台が落下し,その台の上で仕事をしていた作業員2人が全身を強く打って亡くなるという事故を取り上げました。原因は,作業台をつっていたチェーンの破断。ねじっていた所に引っ張りが加わっていたのです。
 こうしたことは,実際の機械では珍しくありません。静的荷重でも引っ張り,圧縮,曲げ,ねじりが組み合わさって作用することは間々あります。それでも設計者は,機械が壊れないように設計しなければなりません。そこで今回より「組み合わせ応力」を扱いますが,体系立った考え方を身に付けてもらうためにまずは復習から。連載第2回の内容と多少かぶりますが,単独荷重が作用したケースを考えます。

延性材料と脆性材料の違い
 最初は丸棒の引っ張り。丸棒と一口にいっても,軟鋼(SS400),焼き入れした高炭素鋼(S50C),アルミニウム合金と,材料はさまざまあります。例えば軟鋼の場合,ひずみεと応力σの関係を表した「応力―ひずみ線図」は図(a)のようになります。初めは引っ張り応力σに比例して(弾性的に)伸びていきますが,やがて荷重の作用方向に対して45°(135°)の方向に「リューダース線」と呼ぶしま模様が観察されます〔図(a)〕。今でこそ,リューダース線は結晶面のずれに起因した「滑り」の表れ,破壊の初期現象と理解されていますが,これを初めて見つけた人はどのように思ったことでしょうか〔図(b)〕。

日経ものづくり 材料力学マンダラ
図●延性材料の応力―ひずみ線図
(a)最初は弾性的に伸び,次に滑りが生じる。その後,加工硬化,くびれが順次発生し,破断に至る。(b)滑りは結晶面のずれに起因する。

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