セイコーエプソンとJSRは,インクジェット方式による低温多結晶Si TFTの形成に成功した。この技術の特徴は,現在のSi TFTと次世代技術として注目が集まる有機TFTの「いいとこ取り」であることだ。

 現在,液晶パネルなどで利用されているSi TFTはフォトリソグラフィで作製しており,真空装置やクリーン・ルームなど高価な設備が必要であるほか,プロセス時間が長く,材料の利用効率が低いため製造コストが高い。一方,インクジェットなどの印刷技術を利用できる有機TFTは,製造コストをより低くできるという期待があるものの,Siではない材料を用いるため,現状では電子移動度などの性能が十分ではない。今回は,Siの液体材料を開発し,これを利用してインクジェット方式で製造することから,液晶パネルや有機ELパネルの駆動用として十分な性能のTFTを,現在よりも安く造れる可能性がある。