奥行き300mmの「厚型」エアコンが登場した。シャープが2006年3月に発売した「SXシリーズ」と「SVシリーズ」である。他社の薄型エアコンに比べて,70~100mmほど奥行きが大きい。

 従来,エアコン・メーカーの多くは奥行きが大きいエアコンは商品価値が下がると考えてきた。シャープがあえて禁を犯したのは,省エネルギー性を高めるためである。今回の製品のうち冷房能力4kWの機種で,同社は「業界No.1の省エネ」をうたう。奥行きを大きく取ることで,空気力学的な損失を減らして消費電力を削減した。

 シャープが本体の外形寸法よりも低消費電力化を優先した一因は,「エネルギーの使用の合理化に関する法律」(いわゆる省エネ法)の改正である。エアコンでは,他の機器に先駆けて省エネルギー性能の評価方法と目標値の見直しが2005年に始まった。2006年の秋には省エネ法が改正され,検討結果が盛り込まれる予定だ。

 法律が改正されれば,従来通りの製品企画や設計思想のままでは,目標年度までに実現すべき省エネルギー性能に達しない可能性がある。シャープが「厚型エアコン」へ大きく舵を切ったのは,今後必要な手段を先取りするためといえる。実際,今回の4kW品は改正後に予定される目標値を達成した。シャープに加え,他のエアコン・メーカーも,省エネ法の改正をにらんだ対策を採り始めている。