明確な定義はないが,一般には不揮発(メモリ)性を備える表示装置のこと。2006年に入り,実用化の話題が相次いでいるが,ここ数年の市場をリードしてきたプレーヤーは米E Ink Corp.である。同社が開発する電気泳動方式(液体中の着色粒子を移動させて表示する方式)の電子ペーパーは,読書端末をはじめ幅広い用途で採用が進んでいることから,電子ペーパー技術の代名詞になっている。しかし,電気泳動方式の初めての実用例をたどると,1970年代前半にさかのぼる。しかも,その主役はE Ink社ではなく,今やPDPの代表格となった松下電器産業だった。

 松下電器が開発に着手したのは1968年のこと。当時,電子写真の液体現像液を開発していた太田勲夫氏が,絶縁性の液体に粒子を分散させるという現像液の技術をディスプレイに応用しようとしたのが始まりである。