日経ものづくり トヨタ生産方式の真髄と新展開

第4回

かんばん,段取り時間短縮,多能工化

村山 明
中部産業連盟 東京本部 
主席コンサルタント

かんばん方式はトヨタ生産方式を実現する上で代表的な方策の一つ。後工程引き取りを実際の工場で実施するためには,いろいろなかんばんを運用する必要がある。今回は,かんばん方式とともに,小ロット生産を進める上では欠かせない段取り時間の短縮,1個流し生産のカギを握る多能工化について解説する。(本誌)


 前回に引き続き,トヨタ生産方式を達成するための,具体的な方策・手法について解説する。今回取り上げるのはかんばん方式,段取り時間の短縮,および多能工化である。

かんばん方式でプル生産を実現
 一般的な生産方式は「前工程から後工程へ品物を流す」,いわゆる押し込み生産である。これだと後工程で必要としないものも造ってしまうので,ムダな在庫が発生する。
 そこで「必要なものを必要なときに必要なだけ」造る,すなわちジャストインタイムで生産できる仕組みが必要となる。そのための考え方が,後補充生産・後工程引き取りである。そして,この考え方を生産工程で実現可能にするのが「かんばん方式」だ。
 かんばん方式の考え方を,組立工程と部品ストア,部品加工工程間に適用した例で説明する(図)。ここでは2種類のかんばんを使用する。部品加工かんばんは,前工程(部品加工工程)が生産すべき品目と量を示し,部品引き取りかんばんは,後工程(組立工程)が引き取るべき品目と量を指定する。

日経ものづくり 特報
図●組立工程,部品加工工程のかんばん適用例
組立工程と部品ストア間で流れる「部品引き取りかんばん」と,部品ストアと部品加工工程間で流れる「部品加工かんばん」を用いて運用する。