日経ものづくり 直言

価値創造型ものづくり力を
産官学でもっと科学すべし

内閣府 総合科学技術会議 議員
柘植 綾夫


 バブル崩壊後の長い道のりを経て,我が国の製造業がようやく本来の底力を発揮し始めたことは大変喜ばしい。内閣府の統計によると,2004年の514兆円に上る国内生産額のうち製造業の割合は20.2%と,前年より0.1%上昇した。全産業中で製造業の占める比率は2年連続で上昇したことになる。
 同時に,製造業の事業収益率の回復が見られること,製造業は我が国の輸出においては依然90%を占めていること,さらに,製造業が新たな高付加価値サービス業を生み出す源になっているなど,価値創造型ものづくり立国強化の重要性はますます高まっている。
 21世紀の豊かな日本を築く道は,国・地方の財政,家庭の財政および企業の財政の三つの財政を同時に健全化する連立方程式を解くしかない。この実現の要は,技術のイノベーションによる新たな価値と需要の創出にあることは論を待たない。

日経ものづくり 直言
柘植 綾夫
1969年三菱重工業入社,2000年同社取締役技術本部長,2002年同社代表取締役・常務取締役技術本部長,2005年1月から現職。工学博士。