日経ものづくり ものづくりインタビュー

私が考えるものづくり

山崎智久
ヤマザキマザック
代表取締役社長

実際に削って見せないと
顧客は納得しない

やまざき・ともひさ
1980年山崎鉄工所(現ヤマザキマザック)入社,1983年取締役,1985年マザックセールス&サービス社(米国現地法人)社長,1988年ヤマザキマザック常務取締役,1991年ヤマザキマザックシステムセールス専務取締役,1994年ヤマザキマザック専務取締役,2001年代表取締役社長に就任,現在に至る。

国内工作機械メーカーの受注高が前年実績を上回り続けて,もう41カ月になる。 しかし何回も好不況の波をくぐり抜けてきた経験から,慎重な姿勢を崩さない。 顧客のワークを実際に削って見せないと,機械を購入してもらえない時代。 しかも典型的な多品種少量生産の業態。 工作機械メーカーみずから,長期的にものづくりの実力を養うことが欠かせない。

 工作機械業界は,ご存じのように非常に好不況の波というか,振幅が非常に大きい業界です。景気の底のときには受注がピーク時の半分以下になってしまいます。過去,良いときに大量に見込み生産してしまって,不況期に多くの在庫,製品在庫も仕掛かり在庫もありますが,これを抱えてしまって資金繰りを圧迫し,経営を苦しくしてしまうのを繰り返してきました。
 もともと,多品種少量生産,変種変量生産の代表的な業種でして,常に激しく振れる量的な需要の変化に生産面で対応しなければならない,という宿命を負っています。そこで「限りなく即納に近い受注生産体制」を目指すことになるわけです。受注から出荷までのトータルのリードタイムを短縮して,仕掛かり在庫を圧縮しなければなりません。

無人化は低賃金に勝る
 そのためには,生産機種の変更や数量の調整を柔軟にできるフレキシブルな生産設備と生産管理手法がどうしても必要になってきます。そこでサイバーファクトリーですとか,ロボットセルだとか,最新型の複合加工機の概念を当社内で考案しました。
 最新型の複合加工機の概念は,1台の機械でワークをチャッキングしたら,機械から出てくるときには完成品になっているというものです。従来は,完成品になるまでにワークが複数の機械を渡り歩いていたわけですね。