SEDテレビの発売時期が約1年半延期になった。理由についてキヤノンと東芝は「生産を合理化して,より一層のコストダウンを図るため」と説明する。ただし両社は,それ以上の内容については口を閉ざしており,周囲の技術者の間では「コストの問題以前に,技術的に重大な課題があるのでは」との憶測が広がっている。特に,過去の展示会で複数台の動作品を披露している36インチ型品に対し,発売を前提に開発している55インチ型品は,映像を表示する形ではまだ一度も披露したことがないことから,大型化や多画素化に伴う課題を懸念する声も少なくない。

 これに対しSEDの開発部門のある関係者は本誌の取材に,55インチ型について「確かに外部には見せていないが,既に十分な画質のパネルが完成している。そう遠くない時期に披露できる」とした上で,残る主要な課題はあくまでコスト競争力の確保であることを強調する。

 キヤノンと東芝は,これまでもコスト競争力の確保に向けてパネルの製造方法を何度となく見直してきた。2004年秋に合弁会社「SED」の設立を発表した当時も「2003年の時点でいったん製造方法を固めた。しかし,その後に液晶/PDPのコストダウンが大幅に進んだため,あらためて製造方法を見直して,再びコスト競争力にメドを付けた」(当時のSED 代表取締役社長の鵜澤俊一氏)と説明していた。