日経ものづくり ドキュメント
新シリーズ

プロデュース 中小企業上場の軌跡 第1回

天国から地獄

新潟県長岡市に本社を置く「プロデュース」。微小なパターンを任意の形状や厚さで形成する「3次元印刷」という独自技術を確立して注目を浴びている。工業高校を卒業した男が,14年前にたった1人で始めた会社だが,いまや大手電子部品メーカーからの受注が相次ぐようになった。目覚ましい成長を遂げた同社は2005年末,ついにJASDAQへの上場を果たす。



 冬の日本海特有の灰色をした雲が垂れ込める新潟県長岡市。とある民家の軒先で,少年が機械造りに没頭する父親を食い入るように見ている。視線の先の父親は徹夜で描いた図面を基に,額に汗し油にまみれながら正確に部品を組み立てていく。
「できた,完成だ」
「ホント? 今度は何の機械なの?」
 父親は機械造りが趣味だった。これまでにも数々の機械を設計し製作している。
「これを入れてみれば,分かるさ」
 少年は父親に言われるがまま,手渡された餅の塊を装置上部にあるホッパから優しく入れた。グォーン。大きなうなりを上げて機械が動き出す。一体,お餅はどうなるんだろう。少年は考えるだけでワクワクする。機械が止まると,少年の目が取り出し口に釘付けになった。
「あっ,串団子」
「どうだ,すごいだろ」
「びっくりした。食べてみていい?」
「ああ,もちろんだ」
 父が造っていたのは,米どころ新潟ならではの発想から生まれた串団子製造機。臼で突いたばかりの大きな餅の塊を投入すると,切って丸めて串に刺し,次々と串団子ができてくる。しかし団子の丸め方もいびつなら,大きさもバラバラ。串団子の出来栄え自体は決して褒められたものではなかった。