日経ものづくり トヨタ生産方式の真髄と新展開

第3回

平準化生産,小ロット生産,流れ生産

村山 明
中部産業連盟 東京本部 
主席コンサルタント

平準化生産,小ロット生産,流れ生産の実践は,ジャストインタイムを実現する上で非常に重要となる。ただし,これらの生産手法をやみくもに導入しようとしても,手間がかかるし,また効果が出るまでに期間を要する。今回は,ステップに分けて効率的に手法を導入できる勘所を紹介する。(本誌)


 前回は,トヨタ生産方式を達成するための手段・方策の2本柱「ジャストインタイム」と「自働化」の考え方・思想について説明した。本号からは,これらを実現するための具体的な方策・手法について解説する。今回は平準化生産,小ロット生産および流れ生産について,導入に至るまでの具体的なステップを述べる。

平準化生産は徐々に進化させる
 トヨタ生産方式で目指すべき平準化生産とは,生産量,品種,時間のすべてを平均化してものをつくることである。それを実現することで負荷の平準化が図られ,在庫の削減および適正な人数と機械設備台数を保有できるなどのメリットが得られる。以下に,平準化生産の実現方法を列挙する。
(1) 平準化生産の対象製品を決定
 多品種少量生産だから平準化生産などできないとあきらめてはいけない。一言で多品種少量生産といっても,よく見ると,ある程度の量を生産している製品があるものだ。
 過去の生産実績の様子を分析すると,図のような実態となることが多い。このような場合は,どこかにしきい値を設けて平準化生産の対象となる製品を決める。対象外の製品に関しては,対象外製品だけをまとめて生産する時間枠だけを設けておく。納入指示に従って,その時間枠の範囲で生産する。対象外製品の時間枠は,過去の生産実績を基に決めればよい。過去の実積より対象外製品を多く造らなければならないなら,残業などで対処する。

日経ものづくり 特報
図●製品の種類と生産量
多くの製品種類を製造している企業であれば,月産量にバラつきが生じているのが当たり前。この場合,平準化の対象となるのは,ある程度の生産量を維持している品種。対象外の製品に関しては,まとめて対象外製品を生産する時間枠だけを確保しておけばよい。