日経ものづくり 特報

アスベストの最期

魔法の材料から悪魔の材料へ



2005年7月の,アスベスト問題に関する関係閣僚による会合の方針に沿って,アスベスト製品は2008年までに全面禁止になる予定だ。特性に優れ,使いやすく,安いアスベスト製品はかつて「魔法の材料」だった。それが一転,今では重篤な健康被害をもたらす「悪魔の材料」に。市場からは退場命令を受けるが,現実問題アスベスト製品に頼らざるを得ない用途は残っていた。ここに来て,それにもようやく代替のメドが立ってきたようだ。ただし,どうやら安全確認は必ずしも十分ではないという。アスベストの二の舞にしてはならない。

 アスベストの猛禍が吹き荒れる2005年8月,経済産業省は学識経験者から成る「アスベスト代替化製品対策検討会」(委員長:物質・材料研究機構理事長の岸輝雄氏)を立ち上げた。狙いはその名の通り「現時点において非アスベスト製品への代替が困難とされているアスベスト製品について,代替を一層促進するための方策を検討する」ためである。
 俎上に載せられたアスベスト製品は,これまで例外的に使用が認められてきた化学,鉄鋼など各種プラントや発電所の配管などに使用するシール材やガスケットなど(図)。同検討会はまず,石油連盟(石油プラント),日本化学工業協会(化学プラント),電気事業連合会(発電プラント),日本鉱業協会(非鉄プラント),日本鉄鋼連盟(製鉄プラント),日本電機工業会(重電機器)の6業界団体をヒアリング。民間企業の取り組み状況を把握した上で,欧米の動向を踏まえながら技術課題を検証し代替化の方向性を探っていった。
 無論,これら6業界では,カッコ内に示したようにアスベスト製品を採用している対象,すなわち使用環境や使用条件が異なるため,具体的な対策については個々に違ってくる。しかし,代替化を推進する上での基本方針に関しては業界を問わず共通している。
 その基本方針は二つある。一つは,新規に建設するプラントや新規に製造する機器には,アスベスト製品を使用しない。実際,2008年までには「アスベスト問題への当面の対応」(2005年7月のアスベスト問題に関する関係閣僚による会合)に沿って,アスベスト製品は全面禁止になる予定だ2)。

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図●シール材,ガスケット,パッキンの種類
シール材は,液体の漏れや外部からの異物侵入を防ぐ。ガスケットは,配管用フランジなどの静止部分の密封のために使う。図中の☆は「アスベスト製品を既に廃止したもの」,★は「現在もアスベスト製品が残っているもの」,残りは「そもそもアスベストを用いていないもの」。パッキンは,回転・往復運動などの運動部分の密封に使用する。グランドパッキンは2005年9月末でアスベスト製品の受注を停止。セルフシールパッキンに関してはアスベスト製品なし。