日経ものづくり ものづくりインタビュー

深谷 紘一氏 デンソー 取締役社長

設計と生産の間で
目線の合ったコミュニケーションを

ふかや・こういち
1966年日本電装入社,1990年生産技術部長,1994年Nippon Denso Manufacturing USA取締役副社長,1995年日本電装取締役,同年Nippon Denso Manufacturing USA取締役社長,1998年デンソー常務取締役,2002年専務取締役。2003年取締役社長に就任。

「目線の合ったコミュニケーション」のように,
分かりやすい言い回しで
チームワークの大切さを説く。
トップダウンで言うことを聞かせるのではなく,
ボトムアップでの協力を重視する。
日本的なものづくりのやり方を,
海外拠点にまで広げているという。
世界初の製品開発も,設計と製造の
チームワークで実現しようとしている。

 ここのところ,ものづくりという言葉がはやるようになってきました。トヨタ自動車が有名になったのは良いクルマがあったからですが,そのものづくりの仕組みであるトヨタ生産方式も,トヨタのブランドを上げたと思いますね。あのムダのないやり方を始めて,それがあっちでもこっちでも広がっていったんだ,とね。常に危機感を持って次の課題へ自分を駆り立てていき,日々改善していく,というような言い方がトヨタを立派にしたし,分かりやすい説明にもなっていたと思います。
 良い製品を造ろうとしたとき,ものづくりを実際に担う製造の側から意見を言わないと,本当にはできないんだという強い文化がデンソーにはあります。本社とか設計室が立派で,そこに優秀な人がいれば,工場は言われた通りに造ればいい,という考え方が成立する世界もあるのかもしれません。しかし我々の分野では絶対に違います。工場の現場からどんどん突き上げることで,あるいは設計者が現場から意見を聞くことでこそ良いものが造れる,という気質がみなぎっていると思います。

設計と生産は水平の関係
 つまり,設計と生産の立場が上下関係ではなくて,水平なのだと思います。私に言わせると「目線を合わせたコミュニケーション」あるいは「心の通ったコミュニケーション」という言い方になるのですけれど,上から見て偉そうに図面通りに早く造れという考え方ではなくて,どこが悪いんだ,悪いんならおれ直すよ,という心の通い合いが大事です。それがものづくりにはものすごく重要なのではないでしょうか。